闇夜の襲撃と突然の別れ

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闇夜の襲撃と突然の別れ

 リュウから連日のように護身訓練を 教え込まれたハクは、十二歳とは思えないほどの 身のこなしと同時にその能力を開花させていった。  しかし、中身は十二歳の少女、 綺麗なキラキラしたものを好み、 母親とお菓子を作ったり、刺繍をしたり するほうが大好きだった。   荒野の中に拠点をおくリュウの家族が住む村。 村人は家族想いで優しく、全員で協力して 生活をしている……とハクは思っていた。    そんなある日、エヴァがハクを連れて リュウのもとにやって来た。  ハクが住む村の一番奥にある白い大きなゲル。  そこは、彼女はが父親の職場と認識している場所だった。  ゲルの中に入ると、その中は見たこともない PCやモニター、無数に設置された電子機器に 驚くハクは、母親の手をギュッと握りしめた。  ゲルの中の一番奥の机の前に座る父、 リュウを見つけたハク。  「父様……」思わず呟いたハクはその場から 動くことは出来なかった。  父親の瞳は鋭く、氷のように冷たく、 微笑みさえ何処かに捨てたかのようで、 ハクが今まで見た父親の顔ではなかったからだ。  ハクに気づいたリュウが椅子から立ち上がると、 ゆっくりと彼女とエヴァの前に歩み寄ってきた。  そして、彼女の頭にそっと手を置くと、  「ハク……これが父様のもう一つの顔だ」  と呟いた。  優しい父、リュウは『King』と呼ばれる 裏組織のボス。 そして、村人は全員『King』に 忠誠を誓う者たちという ことをハクは父親と母親から 知らされたのだった。
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