報復のはじまり

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報復のはじまり

 「ベリー、昨夜は何処に行ってたの?」  マリーがハクに尋ねた。  「あ、昔の知り合いに偶然会って……」  「昔の知り合いね……  で、その人と一夜を共にしたっていうわけ」  マリーの語気が少し強くなった。  「え? っと……」ハクが言葉を濁すと、  物凄い目つきでハクを睨みながらマリーが  「この、尼……  よくも私達のルイ様と……」と語気を荒げた。    豹変したマリーをただ見つめるハク。    「マリー、そんなに声を荒げると外まで 筒抜けよ……」  ひとりの女性が部屋の中に入って来た。  「リズ……」  マリーが呟くと女性は彼女の前に立つ ハクをじっと見つめ、  「ふ~ん……  ベリーってあんたのことだったんだ。  あ、私の名前はリズ。マリーの双子の妹」  リズは、ハクの胸元に光るペンダントを 触りながら微笑んだ。  「リズ……あんただったって……?  ベリーのこと知ってたの?」  マリーがリズに聞いた。  「ええ、昔ね……別の街で見かけたの。 その時も、彼女はルイ様と一緒にいた」  「それってどういうこと?」  「マリー、このベリーって娘は ルイ様の恋人……」  リズからルイとハクの関係を 聞かされたマリーは、首を左右に振ると  「信じられない、ベリーとルイ様が 恋人同士だったなんて……許せない……」  ハクに飛び掛かったマリーはハクの胸倉を 掴むと彼女の頬を手のひらで叩いた。  すると興奮するマリーの手首を掴んだリズは、  「マリー、そう興奮しないの。 可愛い顔が台無しよ。  ベリーには私がこれからゆっくりと 話を聞こうと思ってるから……」  そう呟くと、リズは顎でハクに 外に出るように合図をした。  ハクを連れてマリーのもとを離れた リズは、人影がない路地裏にハクを連れて来ると、 くるっと向きを変え彼女をコンクリートの壁に 押し付けると、  「おまえ……何者だ」と語気を強めた。  壁に押し付けられたハクは、優しく微笑むと  「そうね……殺し屋?   とでも呼んでもらおうかしら」  と呟くと、スカートの下に忍ばせた サバイバルナイフを取り出し、  片手でリズを突き飛ばしナイフを翳し身構えた。  「おまえ……まさか……」リズが呟いた。  「そう、私はあんたらのボス、 ガバン・エルス・ジョン、 そしてスコーピオンに恨みを持つ者だ」  ハクがナイフを翳し、リズにゆっくりと近づく。  「そう……じゃあ、私はあんたを遠慮なく 消せるんだ……我等、スコーピオンを狙う刺客 なんだからね!」と言いニヤッと笑ったリズも ナイフを抜くとハクに向かって飛び掛かってきた。  カキン……カキン、カキン……。  ナイフが重なる音が響き渡る。  「くっ……」  ハクの顔にリズのナイフの刃が 押し当てられそうになるのを必死で我慢するハク。  「もう、おしまいかい?」リズが言葉を吐いた。  すると……  「ふん……雑魚が……」  ハクの声とともに、彼女の身体がリズの 懐にするっと入り込むと、刃先の向きを変えた ハクのナイフが静かにリズの胸元に入り込んだ。  「うがっ……」  真っ赤な鮮血を吐いたリズがその場に倒れ込むと 動かなくなった。    リズの胸元に刺さったナイフを抜いたハクは 自分の呼吸を整えると、  「次は……マリーあんたの番だ」  と呟くと娼婦館に向かって歩いて行った。    
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