報復のはじまり

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 通りを歩くハクのもとにハリスが 歩み寄って来ると、ハクは彼の耳元で、 「マリーの双子の妹、リズ…… 昔、ルイと一緒に襲われた時の黒幕だった」 「そう……か。で? どうした」 「私がしくじるわけないでしょ? 殺したわよ」 「だろうな……  で、ハクおまえはこれからどうすんだ?」 「リズが殺されたことをマリーが知ったら、 ジョンやこの街のスコーピオンの連中に 情報が流れ我々が一気にやられてしまう。  だから、私は今から娼婦館に行って、マリーと ボブを消す……  そして、敵の本陣……ジョンのもとに」  鋭い目をしたハクが呟いた。  「わかったよ。仲間を娼婦館に集める」  「いい、私一人で十分。  それよりハリスお願があるの」  「お願い?」  「娼婦館にイブという女性と その仲間が数名いる。  彼女等は、恋人、家族、仲間を 奴等に殺され無理矢理 この街で娼婦として働かれているんだ。  彼女等をこの街から逃がしてほしい……」  ハクがハリスに伝えた。  「わかった、任せろ。  俺と数名の仲間もその女性等を 逃がした後、おまえと合流する。  ハク……いいな。くれぐれも無理はするな。  やばいと思ったら俺等が到着するのを待て」  真剣なハリスの表情に無言で頷いたハクは 一足先に娼婦館に向かった。  娼婦館ではリズからの連絡が途絶えたことに 疑念を抱くマリーとボブがいた。  「リズはどうしたの? ハクを連出した後 何の連絡もないなんて……まさか、彼女に……」  焦り口調のマリーが語気を強める。  「リズ様はハクと一緒なんですね。 俺はベリーを探すように店の奴等に言ってきます」  ボブが部屋の出入り口のドアノブを握った瞬間、 ドアノブがゆっくりと開くとハクが入って来た。  「ベリー、リズと一緒じゃなかったの?」  マリーが尋ねた。  「ええ、さっきまでは一緒だったけど」  ハクの答えにすぐさまボブが聞き返す。  「さっきまでは一緒?   じゃあ、リズ様は今何処にいるんだよ」    フッと笑みを浮かべたハク……  「ベリー何を笑ってんのよ」  マリーが語気を荒げた。  「ふふふ、ごめんなさい。リズ?   彼女なら……今頃は確実に地獄にいるんじゃないかしら」    「ベリー……おまえ……」  ハクの言葉にボブが拳銃を取り出そうと 腰元に手をあてた。  「くっ……」  瞬時にハクがボブの手を力強く握った。  「ボブ……あなたには色々と お世話になったけど、 あんたは『スコーピオン』の仲間だ。  残念だけど……  二人とも仲良くリズが待ってる地獄に行きな」  ハクはそう呟くと隠し持っていたナイフで、 ボブの首元をかき切った。  「う……が」  膝をついたボブの首から真っ赤な鮮血が 飛び出した。  「キャア~」マリが―叫んだ。  「うっ……」ドサっ……。  ボブは床に倒れ込むとそのまま息を引き取った。  一方、娼婦館の隣に隣接する 館の中に忍び込んだハリス……。  護衛と思われる強面の男達を難なく交わすと、  ハクが言ったイブを探し始めた。  突然館の中に入り込んできたハリスに動揺する 娼婦たちは、何か良からぬことが起こっているのを 察知した様子でその場に立ち尽くした。  「えっとぉ……イブって人はどこ?」  一人の娼婦にイブの居場所を聞いたハリス、 すると、階段の上から声がした。  「何の騒ぎだい?」  「ベリーに頼まれてイブって女を探してる」  ハクがそう尋ねると、  「ベリーが私を探してる?」と呟いたイブに、  「あんたがイブか?」  そう言うとハリスは階段を駆け上がり イブの耳元で、  「ハクからあんたとあんたの仲間をこの街から 逃がすように頼まれた」と囁いた。  「逃がすって……」  「これから、『スコーピオン』の本部に 俺達は襲撃をかけ奴等を組織もとろも消す。  これから戦闘が始まる……  だから、その前に君と君の仲間をこの街から 脱出させる。街外れに我々が手配した人間がいる。 これは当面の間の生活資金と 手首に彫られたタトゥーを消す金だ」  そう言うとハリスはイブに札束が入った袋を 手渡した。  「どうして……そこまでして私達を……  ベリーは一体何者なの?」イブが尋ねると、  「詳しくは言えないが彼女は我々組織のボスだ。 さあ、ここも時期に敵がやって来る。  早く……」  とイブにこの館から皆を連れて出るように 促した。  「わかった。皆、行くよ」  彼女は仲間の娼婦たちに声をかけた。  イブと数人の娼婦たちは急いでその場を 離れようと裏口に向かうと彼女が振り返り ハリスに、  「ベリーにありがとうと伝えて」  と叫んだ。  「ああ、伝えるよ」ハリスが答えると、 イブは静かに頷き裏口から駆け出して行った。  街外れに辿り着いたイブと仲間の娼婦たちは ハクが用意させた車両に乗り込むと、 この街から出て行った。  揺れる車の中でイブは、  「ベリー、あんたのことは忘れないよ。 いつかまたどこかで会えることを祈ってる」  と呟いた。    
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