報復のはじまり

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 娼婦館の支配人室の床に横たわるボブの傍らに 膝まづいたマリーはガタガタと震えながら ハクに命乞いをしていた。  「ベリー、わ、私と手を組まない?  叔父様とルイ様に気に入られているあなたなら、 きっと『スコーピオン』でも幹部になれるし、 一生困らない程のお金と贅沢な生活が 保障されるのよ」  ナイフを片手に…… ハクがマリーの傍らにしゃがむと、  「ね~、マリー、大切な人を目の前で 殺されたり、騙し討ちにあって 所在不明にさせられたりした経験ってある?  ないわよね。  私はね、目の前で母親や仲間を大勢殺されたの。   そう、あんたの尊敬する叔父様たちに……  だから、我々は身分を隠して周到に 準備を重ねてきた。  『スコーピオン』を駆逐するために……  私は、私を捨てたの……生きて行くために。  だから、人殺しや悪事も平気でやるの……」    七色に光るハクの瞳の奥に燃え滾る炎と 漆黒の闇が見えたような気がしたマリーは 言葉を失った。  「わかってもらえて光栄だわ。  マリー、さようなら」  そう呟くとハクはマリーの背中から ゆっくりとナイフを突き刺した。  「あ……うがっ……」  マリーがハクの頬に触れようと手を伸ばそうとした瞬間、 ハクはナイフを一気に押し上げた。  「うがっ……」  鮮血を口から吐き出したマリーはそのままハクに もたれかかり絶命した。  もたれかかるマリーの身体の重みから 解放されるようにハクは立ち上がると 静かに部屋から出て行った。  ハクが支配人室から出てくると、一階フロアでは 数人の仲間が彼女を待っていた。  「さぁ、最後の仕上げ…… ガバン・エルス・ジョンのもとへ皆を終結させて」  ハクが呟いた。  
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