復讐の果てに

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 浴室から出て来た薄衣姿のハク、 そんな彼女の姿を見たジョンはゴクっと 生唾を飲み込んだ。  「ベリー……素敵だ、早くここに来い」  ジョンがハクをベッドに誘うと、  「ボスったら……」とハクがはにかんだ。  「ベリー、おまえは不思議な女だな…… 初めておまえを見た瞬間から私はおまえのことが 忘れられないんだよ。  ただ、あの夜のことはどうしても 覚えていなくて」  「ボスはとても激しくて素敵でした。 背中に彫られた見事な『スコーピオン・キング』、 私、それを見た時身震いがしました」  「キング……私はまさに今裏社会のキングと 呼ばれているからな…… キングこそ私の呼び名にふさわしいと 思わないか?」  「ええ……」ハクが呟いた。  「ベリー……」  ジョンがハクを引き寄せ、ベッドの上に 押し倒すとそのまま抱きしめはじめた。  「ボス……今夜は私が……」  ハクが囁くと、彼の身体の上にまたがりジョンを 見下ろした。  「ベリー、今夜はおまえから誘うのか?」  ジョンが嬉しそうに彼女を見上げると、 部屋の灯りを背にハクが笑みを浮かべているのが わかった。  「長かった……今、この時をどんなに 待ちわびたことか」  ハクの言葉に驚いたジョンは、  「おまえ……まさか」と呟いた。  「そう……私は、kingの娘。父様、母様、 そして大勢の仲間を殺した『スコーピオン』、 ガバン・エルス・ジョンに復讐するために 近づいた。  『king』と呼べるのは…… 『king』にふさわしいのは 我が父、『リュウ』だけだ」  そう言うとハクは隠し持っていた拳銃を構え、 間隔をあけずにジョンの額に向かって引き金を 引いた。  パァ……ン。  額を撃ち抜かれたジョンの身体からおりると、 ハクは洋服に身を包み部屋のドアを開けた。  銃声を聴いた数名の手下が階段を 駆け上がってくる足音とともに、下のフロアでは ハリスと仲間たちの襲撃が始まっていた。  「ベリー、どうしたんだ? 何があった? ボスは無事か?」男達がベリーに駆け寄ってきた。  ハクは無表情で……  「彼は部屋の中にいる……」と呟いた。  男達がジョンの部屋に駆け込み 変わり果てた彼の姿を見て、  「ベリーだ……ベリーが裏切った。 ボスがやられたことをルイ様に報告しろ」  と慌てて部屋から飛び出してきた。  廊下の端に立つハクの姿を見つけた男達は、  「ベリー、おまえよくもボスを……」  と口々に叫ぶとハクに襲い掛かった。    自分に向かって来る輩に向かって ハクがゆっくりとナイフを構え笑みを浮かべた。  ブス……ブス……ブス……。  「うっ……」  「うがっ……」  「ううう……」  ドサ、ドサ、ドサ……。  次々と男達が床に倒れ落ちた。  ハクは、倒れ落ちた男達に見向きもせず 階段を下りて行った。  
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