永遠の想い

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 両手を広げたルイは、いつものように優しく 微笑んだ。  そんなルイを七色の瞳で見つめたハクは、 無我夢中で彼の腕の中に飛び込んだ。  ルイはそっと彼女のことを包み込むと、 力強く抱きしめた。  無言で抱き合う二人……。  ハクはルイを見上げ、ルイはハクを見下ろす。  ルイがハクを見つめながら微笑んだ。  「ハク……無垢で綺麗な心の君を僕は忘れない。 ハク、君を心から愛してる」  彼の言葉に涙をにじませるハク。  「ルイ、あなたに巡り合えたのは運命?」  「そうだね……それをいうなら宿命かな?」  「宿命……確かにそうかもしれない。 ルイ、あなたと出逢ったのは運命、 そして今日この日を一緒に迎えることは 天から与えれらた宿命、殺し合うことも……定め」  そう呟くとハクはルイの身体から離れ、 ナイフを握りしめると刃先を彼に向けた。  ナイフをルイに向け構えるハクにルイは、  「そうだね。僕らは出逢っては いけなかったんだ」  そう呟くと彼も拳銃を手に取り 銃口をハクに向けた。  「ルイ……」七色の瞳から流れ落ちる涙。  「ハク、来い。kingの娘、決着をつけよう。  我がスコーピオンに栄光あれ」  ルイが引き金に指をかけるとハクに向けて 引き金を引いた。  パキュン……  銃口から飛び出した弾丸は彼女の頬をかすめたと 同時にハクはルイの懐に飛び込むとそのまま彼の 胸元にナイフを突き刺した。  「う……」  ナイフをルイの胸元に突き刺しているハクを ルイが抱き寄せると自ら自分の身体をハクの身体に 密着させた。  「う……ぐはっ」  ルイの口から吐き出される鮮血。  ルイは力を込めてハクを抱きしめた。  ハクは、彼の身体に突き刺さったナイフが 彼の身体の奥深くまでじわじわと 入り込んでいく感触が 自分の手に伝わっていくのを感じた……。  「ルイ……」  声を殺しながら囁くハクにルイが最後の力を 振り絞るかのように、  「ハク……君は強くなれ。  赤く燃えがる情熱と黒く夜にはびこる闇の如く そして……無垢で純粋な心を忘れないで…… 僕は……君を……守りた……かった…… ハク……愛……し……て……る」  ルイはハクにもたれかかるように全身の力が 抜けるとその場に倒れ込んだ。  「ルイ、ルイ……私もあなたを愛している」  ハクはルイを腕の中に抱き上げると、  ルイはニコッと優しく微笑み頷くと静かに瞳を閉じた。  バタバタバタ……。  バタン。  ハリスと仲間がルイの館に駆け込み、 二階のドアを開くと、銃で撃たれた男が二人と、 床に座り込み動かないルイを抱きしめているハクの 姿が目に飛び込んできた。  「ハク……」  ハリスの声にハッと我に返ったハクが 立ち上がると、  「我等の悲願は達成された。  宿敵の『スコーピオン』は今ここで息絶えた」  と叫んだ。  「父様……母様……」ハクは胸元のペンダントを握りしめた。  ハリスは、ルイの身体近くに落ちていた 拳銃を拾い中を確かめると驚いた表情を見せた。  「ハク……これ」  ハリスの声にハクは無言で頷いた。  ルイが最後に手にしていた拳銃の中は、 ハクの頬をかすめた弾丸意外は込められておらず 空の状態だった。  「あの野郎……  最初からハクに自分を殺させようと……」  ハリスが呟いた。  無表情になったハクが、  「私は……今日から生まれ変わる」と呟いた。  「ハク……  いや、おまえはKingの後継者……」  ハリスの声にその場にいた仲間全員がハクの 前に跪くと頭を垂れた。  「我が名はQueen……皆、今日から我に続け」  「はっ……Queen、我等命はあなたと共に」    こうして、King無き跡、 『スコーピオン』を壊滅させたハクこと Queen率いる暗殺集団は あらゆる手段で着々と勢力を伸ばし 全世界を支配する裏組織の 頂点へと昇りつめていくことになる……。  愛する人を自らの手で殺めたハク、 あの日以来、彼女は人が変わったように クールで冷酷さを極めていった。  そして……六年の歳月が流れた。
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