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差し込む光
荒野中の道を走る一台のジープ。
「ハク、この辺に来るの久しぶりだな」
ハリスが彼女に話しかけた。
「そうだな……八年ぶりか?」
車内で話すハリスとハク。
「Queen、ハリスさん、道端に誰か倒れてます」
運転手が二人に言った。
「なんだなんだ?」後部座席からフロントガラス
越に前方を見つめるハリス。
「素通りしますか?」運転手が尋ねると、
「停めて……」ハクが呟いた。
キキキ……。
ジープが道端に停車すると土煙が上がった。
バタン、バタン。
運転手と一緒に車からおりたハクとハリス。
倒れている人物の前にしゃがみ込んだハリス、
「ありゃ~、これはひどい怪我だ。
衣服もボロボロじゃん。
さてはバックパッカーが襲撃でもされたんかね?
あ~あ、パスポートとか金目のもの全て
盗まれてんじゃん。可哀そうに……
ハク、どうする? こいつ……外国人だぜ、
面倒なことになるからこのまま捨てとくか?」
倒れた人物の上着の中を調べながら呟くハリス。
「本部に運んで手当をして……」
ハクの言葉に少し驚いたハリスは、
運転手とともに怪我をした外国人を車に乗せ
彼等の本部に連れ帰った。
数日後、ハリスのもとに部下が
やって来ると報告を始めた。
「ハリスさん、あの外国人の意識が戻りました。
ただ……少々困ったことがありまして」
「困ったこと?」
「はい……言葉がわからないのか……
英語と東洋の国の言語を混ぜたような言葉を
話すんですが、どうも今までの記憶がないようで
自分が誰なのかわからないみたいなんです」
「それって……記憶喪失か?」
「はい……多分」
「わかった……Queenには俺から報告する」
部下にそう伝えるとハリスはハクのもとを
訪ねた。
ハリスから報告を受けたハクは、
「東洋の国の言葉?」と呟いた。
「ああ、俺もよくはわからないんだけど」
「わかった。回復の様子を見て
その男に会いに行く」
ハクはハリスにそう伝えた。
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