父と娘の決意

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父と娘の決意

 ブォオン……。キキキ。  襲撃を受け、敵から逃れたハクと リュウ……そして数十人の村人。  その中にはハクの母、エヴァの姿はなかった。  「父様、母様はどこ?」無邪気に尋ねるハクに、 瞳いっぱいに涙を溜めたリュウが、無言で ハクの頭に手をのせ、ゆっくりとさすった。  生き残った者たちのすすり泣きが 色んなところから聞こえてきた。  「ハク……よく聞きなさい。母様は敵から 私とおまえを守り……天に召された」  「母様が……天に召された?」  父の言葉を聞いたハクの虹色の瞳から、 大粒の涙が流れ落ちた。  「母様……母様……わぁ……ん、わぁ……ん」  彼女はリュウに抱きつき、声を上げて泣いた。  リュウも、ハクを抱きしめると声を押し殺して 泣いた。  泣きつかれ、憔悴しきったハクにリュウが 声をかけた。  「ハク、おいで……」  ハクを呼び寄せたリュウは、 彼女を岩肌がそびえ立つ崖の上に連れて行った。  崖の上のに立つリュウとハク、 眼下に見えたのは、さっきまで幸せに 暮らしていた村から立ち上る赤い炎と煙だった。  崖下から巻き上がる風で髪が揺れるリュウの 横顔は、悔しさと虚しさと……  そして、復讐心に燃えるように鋭かった。    「父様?」ハクが声をかけると、  リュウは隣に立つハクを抱き寄せ、  「いいか、ハク。この光景をよく覚えて おきなさい。 母様を殺した奴等のこと。  炎で燃えあがる村を……  人々の叫び声を忘れるな。  我々を狙ったのは恐らく我々の組織の分断と 壊滅を企てる奴等だ。  これから、我々は奴等の素性を調べあげ 報復を開始する。  奴等を皆殺しにし、壊滅させる。  どんな手段を使っても追いかけて消してやる」     「どんな手段を使っても追いかけて消すの?」  「ああ、そうだ。ハクよく覚えておきなさい」  父の力強い言葉を聞いたハクは無言で頷いた。   皆がいる場所に戻って来たリュウは、  「これより我々は、我々の仲間、 家族を殺した奴等 一人ひとりに罰を与える。  どんな手段を使っても追いかけて消す。  今、この時から我々は 『暗殺者集団(アサシン)』となる。  皆、この私『King』に力を」と叫んだ。    「ウォォ~、ウォォ~」  リュウに追従するかのように皆が天に向かって 拳を突き上げた。  こうして、リュウこと『King』とその仲間たちは 早急に体制を整えるとと同時にその勢力を拡大して行った。  
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