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雨のワルツ
「友達がさぁ部屋から出てこないの・・・」
『あと一年で地球が終わるらしいし、他人の家族に首突っ込むのやめて、自分の人生好きに生きたらどう?』なんて言ったらやばい、流石に僕でもわかる、良かった、つい言ってしまわないで・・・
そして乗るといった相談だ、一回真剣に考えてみよう。
「友達ってどんな人?」
彼女は前を向きなおし、腕を組み難しい顔をしながら考え始めた。
「めっちゃいい子!やさしいし、いつも笑ってるし、皆からも信頼されてる!」
その声によって雨が一瞬聞こえなくなるほど、大きな声で友達の良いところを聞かされたが、じゃあなんで・・・
「引きこもった、理由とか聞いてみてもいい?」
「それが、あんま知らないんだよね・・・」
『知らないんじゃどうしようもないな』なんて言葉を喉に詰め込み、「う〜ん」と難しい顔を作りながら何か別の答えを頭の中で探し続ける。
「一瞬でも、その子を部屋から出せるだけでいいの、何か方法はない?」
彼女の顔は真剣そのもので吸い込まれてしまいそうな、綺麗な黒い瞳が見えた、少し心臓が跳ね上がるのを感じて、僕は急いで顔を逸らして話をつづけた。
「一瞬だけでもいいの?」
「うん、そしたら、私が抱きしめてもう離さないから」
いきなりロマンチスト的な言葉をよく口に出せるな、尊敬に値する、僕だったら喉に引っかかって、頭でまた考えて・・・
だめだ、今これを考えてる場合じゃないな。
「君は何か楽しいって思ったことはある?」
楽しい・・・か、ここ何年楽しいという感情を思って来なかったかもしれにあ、睡眠?食事?いっぱい寝れたとき?美味しいカレーライスを食べた時?いやそれは楽しいじゃないな、もっと前に戻ろう、中学校を卒業した時?いや、どちらかといえばあれは悲しいだな、入学したとき・・あれは不安が大きかったか、小学生の時・・・テストで100点とれた時?テストでスラスラとけたとき?いや違うな・・・もっと前の僕は・・・
「ワルツ・・・」
いつもなら頭がその言葉を静止してくれた、いつもなら喉に引っかかって言葉に出せなかった。
いつもなら・・・
「ワルツ?ってのは何?」
「ワルツは・・・踊り、ダンスの種類」
彼女の足は犬の尻尾のような役割をはたしているのだろうか、足の速度が全体的に上がった気がする。
「君はワルツを踊れるの?」
「うん、あんまり上手くないけどね」
「へぇ〜!じゃあ教えてよ!」
教えてよ?ワルツを?この僕が?
そんなの
「無理だよ・・・難しすぎる、上手くできないよ」
「いいよ、上手くできなくても」
彼女は犬の尻尾のように動かしていた足を地面につけ、立ち上がった。
「ワルツは楽しいんでしょ?」
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