1人が本棚に入れています
本棚に追加
終わらない
ポケットに入ったままのスマートフォンがアラームを鳴らし全力で僕を起こしに来た。
ワルツの授業まで残り40分程だった、ベットから体を起こしテレビをつけ地球終了が早まっていないかを確認しながら着替えることにした。
「・・・現在詳しく調べており・・・」
「東京だけ?ですか・・・」
「この意見は・・・」
着替えが終わり座ってニュースを見てみると驚きの情報が書いてある。
「東京・・・のみ・・・晴れ?」
丁度僕があのことワルツを踊っていた時間だ、12時32分から33分の1分間東京は雲間から太陽が顔を出し、雨が完全に止んだ・・・
結局あの子は誰だったのか、もう分からない。
僕も名乗ってないし、彼女だって名乗っていない。
でも、いい。
思い出したんだ、ワルツの楽しさを。
いつも通り、雨の中ワルツ教室に向かった、いつもならついているはずの電気がついていなかった。
鍵は開いており、中に入ると奥の練習室で一人ワルツを踊っている先生が見えた。
僕が憧れた、楽しそうに踊っていた、僕にワルツを教えてくれた、先生が。
「こんばんわ」
ドアを開け先生に挨拶をすると、動きを止め驚いた顔で、こちらを見つめている、いつもなら聞こえないはずの雨が屋根を叩きつける音まで大きく聞こえていた。
「こんばんわ・・・もう皆来ないわ、辞めるって連絡がきたの、あなたも帰っていいよ」
「帰らないです、僕に・・・ワルツを教えてください」
突然溢れてきた涙を抑えるために先生はしゃがみ込みバックの中からティッシュを取り出し、話し始めた。
「ごめんなさい、あなたには才能があった・・・でも、私に教える技術がなかった・・・あなたは確実に私より、上手い・・・私じゃない、もっと上手な人に教えてもらいなさい」
先生は俯きながら、悲しそうにでもどこか寂しそうにそう告げた、それでも・・・僕は
「僕は先生のワルツを見て始めたんです、僕はあたなに教えてもらいたい」
「そう・・・知ってる・・・あなたが小学生のころ私に言ってきたもの天に上るほどうれしかった・・・でも私はあなたを上手に育て上げられる自信が全くない・・・それに来年で地球も終わるわ・・・もっと他で自由に生きなさい・・・」
「地球が終わってもワルツは終わらないです、自由にというのなら僕は先生にワルツを教わりたい」
最初のコメントを投稿しよう!