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Prologue————*
꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳
美しい青年が寝台であぐらをかいている。
月明かりが照らす蒼白なシーツの上で、綺麗に折りたたまれた二本の長い足がしなやかな曲線を描いていた。
ラフなシャツにトラウザーズといった軽装だが、彼が纏う衣服の類はどれを取っても一流の素材・仕立てによるもので、この青年がいかに高貴な身分であるかを知らしめている。
「おいで」
低いがよく通る美声の主は妖艶な笑みを浮かべながら、膝と膝のあいだを長い指先でトントンと叩いて見せた。
——まさか、お膝のあいだに座れと……?!
中庭の温室で初めて会ったあの日。
噴水の縁に身体を預けたこの青年——カイル皇太子殿下——が、同じ仕草をした時のことを今でもよく覚えている。
——隣に座るだけでもあんなに緊張したのに。お膝のあいだに座るなんてハードルが高すぎます……っ
セリーナがなかなか応じないので、寝台の上に鎮座する美貌の皇太子はアイスブルーの瞳に悪戯な笑みを滲ませながら大きく両腕を広げた。
「寝台の上で遠慮は無用だ。ほら、おいで?」
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