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アドルフが琥珀色のお茶を静かにすする。
見れば叱られたあとの子供のように項垂れたカイルが、真鍮のチェアーの上で膝を抱えて座っている。いわゆる《三角座り》というやつだ。
「ちょ、小さい椅子が殿下の長い足、持て余してるじゃないですか」
ロイスに諭されたカイルはおとなしく両足を下ろし、今度は姿勢を正してきちんと座り直した。
「どっちにしても叱られた子供ですね」
何かありましたか。
アドルフにも聞かれた同じ質問に、カイルの頭が更に下がってしまう。
「……なんでもない、ちょっと変わった侍女が居るだけだ」
「あ〜、その侍女にコテンパンにやられちゃったわけですね?」
「俺はまだ何も言ってない」
「百戦錬磨の殿下が、珍しい……というか初めてですよね、負けたの。」
負けた、というのは相手が達しなかったという事実のデフォルメだ。
「いや、だから! 別に負けたわけじゃない、ちょっと手こずってるだけだ」
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