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え──っ、二回もダメだったんですか!
ロイスのその言葉に、カイルはますますしゅんと項垂れた。あたかも子犬の耳が完全に下を向いた状態である。
「いい加減にしろ、ロイス。百戦錬磨の殿下だって負けることもある」
「だから負けてない!」
あの侍女がどういう意図を以って寝所に来るのか知れない。
不敬極まりないあの侍女の役職を強制的に解いてやろうかと思った。皇太子を突き飛ばしたなど、死罪にも等しい行為だ。
だがしかし──このままでは男として本当に《負けた》ことになる。
あのような初心者ごときに負けたままでいいはずがない。
──思えば彼女を相手にしたのはまだ二回だけではないか。
まだまだ、これからだ。しかも変人の侍女に押されて、いつもの何分の一も手を出せていない。
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