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救いの手
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「……精油? カイル殿下がお気に入りのあれの事かしら」
皇太子の寝所から早々に帰されてしまってから……しかも二度も!……セリーナは自分がしてしまったであろう失態について考えを巡らせていた。
それに前回の初仕事では《せいゆ》というものを知らなかったために、皇太子の不機嫌さを加速させてしまったという前科もある。
「湯殿の準備とか、仕事の詳細は選考後に広間で説明を受けましたよ?」
「あの時はっ……宵の業務のことで頭がいっぱいで、ちゃんと聞いていませんでした……。ねえアリシア、《せ・い・ゆ》って何なのですか?」
えっ、そこから?! と、アリシアをまた笑わせてしまった。
「私は地方で育ちましたから、帝都の流行りものには疎くて」
「でも、それだけで憤慨されて、カイル殿下はあなたをお返しになったの? そんな短気な方ではないと思うのだけど」
「いえ……その前もそのあとも、私の無知と不慣れのせいで怒らせてしまったのだと思うのですが……とにかく必死だったので、よく覚えていなくて」
──怒らせてしまったというか、私を部屋に入れた時からずっと怒ってましたよね? とにかく、いつも不機嫌で怖い人ですっ。
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