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「初めての職務ですもの、失敗して当然よ。殿下は大勢の侍女を相手にしていますし、細かいことは気にされてないと思いますよ。だから元気を出して? ねっ」
アリシアの優しさと笑顔がセリーナの心を穏やかに溶かしていく。
彼女が治癒の能力を持っているから?
治癒能力は人の心の痛みも治せるのかも知れないと、セリーナはそっとうなづいた。
──いくら殿下が権力の傘を着たひどい人だとしても。高額なお給料と支度金までいただいていますし、無知のままでは申し訳ないもの。皇太子殿下をこれ以上怒らせてお城を追い出されないためにも、私なりにできる努力をしてみよう。
何もかもがダメな自分でも、給料をもらっているからには必要なことを学んで仕事をきちんとこなしたい。セリーナは思い立ったように、すっくと顔を上げる。
「あのっ……宮廷書庫室って、私たち侍女も入れるのですか?」
*
「上級侍女様は、どうぞご自由に閲覧くださいませ。お部屋に好きな本をお持ちになっても構いませんよ。」
職服をきちんと着こなした宮廷書庫室の管理官は、セリーナを快く迎えてくれた。
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