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『白の侍女』の白いお仕着せがこんな場所で役立つなど考えてもいなかった。
上級侍女は基本的に城内フリーパスで、特別な許可が必要なのは皇宮内の一部の場所だけだとも聞いた。
漠然と知識を得たいと言っても。
三階ぶんの吹き抜けの壁全面に、書庫棚は天井まで続いている。
この恐ろしく広い書庫室で、何をどうやって学べばいいのだろう。
管理官に尋ねて、帝都の若者に人気があるという本を何冊か借りることにした。
甘く蕩けそうなベストセラー恋愛小説の表紙には『成人向け』と記載があった。
意味がわからず読んでみたが、セリーナのような初心者には衝撃的な内容だった(しかし宵の業務の勉強にはなった)。
セリーナが育ったロレーヌ地方ではまず手に入らない高価な書籍が、視界いっぱいに脈々と並んでいる。
煌びやかなドレスや宝石、生活雑貨本……挿絵のきれいな大型本を眺めているだけでも心が躍った。
──午後まで仕事がないから、午前中いっぱいは書庫室で過ごせそうね。
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