救いの手

3/9
前へ
/116ページ
次へ
 『白の侍女』の白いお仕着せがこんな場所で役立つなど考えてもいなかった。  上級侍女は基本的に城内フリーパスで、特別な許可が必要なのは皇宮内の一部の場所だけだとも聞いた。  漠然と知識を得たいと言っても。  三階ぶんの吹き抜けの壁全面に、書庫棚は天井まで続いている。  この恐ろしく広い書庫室で、何をどうやって学べばいいのだろう。  管理官に尋ねて、帝都の若者に人気があるという本を何冊か借りることにした。    甘く蕩けそうなベストセラー恋愛小説の表紙には『成人向け』と記載があった。  意味がわからず読んでみたが、セリーナのような衝撃的な内容だった(しかし宵の業務の勉強にはなった)。  セリーナが育ったロレーヌ地方ではまず手に入らない高価な書籍が、視界いっぱいに脈々と並んでいる。  煌びやかなドレスや宝石、生活雑貨本……挿絵のきれいな大型本を眺めているだけでも心が躍った。    ──午後まで仕事がないから、午前中いっぱいは書庫室で過ごせそうね。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

161人が本棚に入れています
本棚に追加