救いの手

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 さすがは皇城の書庫室、吹き抜けを含む閲覧空間は広々としていて開放的だ。  それに、世界中の本がこの場所に集められたのではないかとさえ思える──セリーナの村にある小さめの建物なら、この空間にすっぽり収まってしまいそうだ、とも思う。  ──こんなにたくさんの本に囲まれて過ごせるなんて、夢のようだわ……!  吹き抜けの巨大なガラス窓から差す光の筋や、古紙の、枯れ草に似た香ばしい匂い。  適度な静寂の快適さも手伝って、セリーナは「一日中この空間に入り浸っていたい」とさえ思うのだった。  ──そろそろ戻らなくちゃ。  大切そうに本を抱え、書庫室を出ようとしたときだ。 「あら……ずいぶん貧相な方がいらっしゃると思ったら、まさかあなたも『白』なの?」  あからさまにセリーナを見下すような声が、背後から耳に届いた。  振り返れば、そこには──セリーナと同じ《白の侍女》が三人立っている。 「驚いた。カイル殿下にお仕えする上級侍女に、あなたのような見窄らしい人がいるのね」
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