救いの手

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「まぁ、せいぜい頑張ることね」  彼女たちはセリーナを横目で睨みながら、すれ違いざまにわざと肩をぶつけてきた。 「あっ……」  弾みで抱えていた本が手から離れ、床に散らばる。  ──大切な本が!  セリーナが慌てて拾うのを、侍女たちが笑いながら見ている。 「皇宮に来て早々、弱い者いじめですか?」  突然若い男性の声がして、皆が一斉に振り向いた。  いつからそこに居たのだろう。腕を組んで本棚に寄り掛かり、こちらを見つめる長身の青年の姿があった。  青年はゆっくりと歩み寄ると、三人の侍女たちの目の前に立ちはだかる。 「シャニュイ公爵様っ……!」   後ろに撫でつけられた黒髪、精悍な顔立ち──。  セリーナが皇太子と間違えた美丈夫の青年が、三人の侍女たちを表情のない目で見下ろしていた。
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