救いの手

9/9
前へ
/116ページ
次へ
「侍女たちの間にも色々あるのだろうが、困った事があったら私の名前を出して侍従長に相談するといい。彼は頼りになる男だから」 「はっ、はい……。ありがとう、ございます」  公爵はセリーナに背を向けると、肩越しに振り返って片手を振ってくれる。  ──カイル殿下とはぜんぜん、というか真逆ほど雰囲気が違いますけど……シャニュイ公爵様も、本当にきれいな方ですね。それに……私のような侍女にまで親切に接してくださるなんて。  隙がなく洗練された彼の立居振る舞いに、セリーナは今日も魅入ってしまう。  公爵の後ろ姿を見送っていると、正午を知らせる時報の鐘が鳴り始めた。 「やだ、急がなくちゃ……!」  今日は皇城の一般開放日。  皇宮に仕える上級侍女として、初めての『大きな仕事』が待っているのだ。  そして──この時のセリーナは気づいていない。  自分の生涯を変えてしまうに、巻き込まれてしまうなんて。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

161人が本棚に入れています
本棚に追加