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「侍女たちの間にも色々あるのだろうが、困った事があったら私の名前を出して侍従長に相談するといい。彼は頼りになる男だから」
「はっ、はい……。ありがとう、ございます」
公爵はセリーナに背を向けると、肩越しに振り返って片手を振ってくれる。
──カイル殿下とはぜんぜん、というか真逆ほど雰囲気が違いますけど……シャニュイ公爵様も、本当にきれいな方ですね。それに……私のような侍女にまで親切に接してくださるなんて。
隙がなく洗練された彼の立居振る舞いに、セリーナは今日も魅入ってしまう。
公爵の後ろ姿を見送っていると、正午を知らせる時報の鐘が鳴り始めた。
「やだ、急がなくちゃ……!」
今日は皇城の一般開放日。
皇宮に仕える上級侍女として、初めての『大きな仕事』が待っているのだ。
そして──この時のセリーナは気づいていない。
自分の生涯を変えてしまう事件に、巻き込まれてしまうなんて。
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