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ふん、と息をついた皇太子の蒼い瞳は熱を孕み、遠慮がちに見上げたセリーナの瞳をとらえて離さない。
口元に浮かべた悪戯な微笑みもそのままだ。吐息がかかるほどに近づいた顔と顔との距離感には戸惑うばかりで、目のやり場にも困ってしまう。
そんななかで紡がれた皇太子の艶のある低い声。
耳元でささやかれたので思わずのけぞってしまった。
言の葉は強引だけれど、幼子をあやすように優しい声色がセリーナの鼓膜を揺らす。
「今度はちゃんと断っておく……もう殴られるわけにはいかないからな。今夜こそ私はお前を抱く。抵抗は許さない」
——どうしよう!?
鼓動がはがねのように胸を叩く。
——拒否してしまえば今度こそ皇城を追い出されるかも知れません……三度目の正直で、さすがにもう《失敗》はできませんっっ。
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