Prologue————*

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諭すような言葉と凛々しい腕に囲まれて逃げ場を失ってしまったセリーナは、さすがに覚悟を決めたのか、うつむいたまま消え入りそうな声で応じる。 「………はい。仰せのままに」 セリーナの言葉が終わると、すぐに皇太子の大きな身体がのしかかってきた。 不意打ちのように耳朶を甘噛みされ、思わず小さな声が漏れる。 「や……っ……?!」 驚いて身体をよじったが、並の男性よりも上背のある皇太子とは二十センチ以上も身長差がある。並の女性よりも小柄なセリーナが少しだって抵抗できるはずもなかった。 耳朶に続いて首筋に柔らかいものが触れる。ちゅ、と卑猥な音を聞けば、ぞわりと背筋があわだった。 ほぼ同時に右側の胸が大きな手で包まれる。薄い夜着ごしに皇太子の手のひらの熱がじんわりとセリーナの肌に伝わった。 ——皇太子は左利きだ。 なんて、どうでもいい思考が巡る。 慣れた所作で身体に触れてくる皇太子は、他の侍女たちの経験談に違うことなく、やはり《口づけをしない》のだった。 「く……ぅ」 唇の代わりに首筋に落とされるキスの雨。 同時に、あけすけな夜着のレースの上から胸の頂きを優しく摘まれると、予想だにしなかった刺激の強さに声が口から溢れ出そうになる。
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