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「おめでとう、善紀」
久しぶりに善紀と並んで歩く。
朔は試合終了と共に、病院に駆け込んで行った。
一緒について行こうと申し出たけれど。
「今日は、高千穂を称えてやれよ」
と、断られた。
「ありがとう」
短く言って善紀は優海を見た。
「オレ……次も頑張るから……」
そう言って立ち止まり、優海の腕に手を添える。
次の瞬間、盛大に優海のスマホが鳴る。
スマホを確認した優海は笑顔満面で、善紀に伝えた。
「朔のお母さんの手術、成功したって!」
善紀はため息をついた後、笑顔を見せた。
「優海のエールが届いたな。良かったな」
誰かが頑張っている時、頑張らなければならない時。
今までしてもらってきたように、私も誰かに届けたい。
エールを。
夏の始まりの空気を感じながら、二人は夕暮れの道をゆっくり歩き始めた。
〈了〉
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