抵抗不可能

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 授業中はノートをとりつつ、こっそり落描きをする。レイン様を描こう。リラ君は今、描く気になれない。目の前に座る笠井君の背中を見ると、リラ君を描いたらビッチっぽい表情になりそうで。  先生が1番前の席にプリントを配る。それを順番に後ろに回していく。 「はい、黒崎くん」  笠井君が振り返ってにっこり笑顔でプリントを渡してくれる。受け取るも、笠井君の視線が下がった。俺もそちらに目を向ける。  ……ヤバい! めっちゃレイン様見られた。でも、服着てるし絡み絵じゃないから何とかなるか?   俺は笠井君に愛想笑いしてプリントを掴むと、後ろの席にすぐ渡した。ゆっくり正面を向くと笠井君もすでに前を向いていた。  授業終了の合図と共に笠井君が振り返った。 「黒崎君ってめっちゃ絵上手いね!」  可愛らしい笑顔を向けてくる。俺が攻めキャラならデレデレとして恋の奴隷と化していただろう。あいにく俺はモブキャラだから落ちることはないけど。 「そんな事ないし、恥ずかしいから内緒にして欲しい」 「そうなの? 何のキャラか分からないけど、めっちゃかっこよかったよ」 「そうかな? ありがとう」  そりゃBL漫画のキャラだから知らなくて当然だろう。何のキャラ? って聞かれなくてよかった。無難にお礼だけ言っておく。 「俺ね、このアプリゲームが好きなんだけど知ってる?」  笠井君に見せられたのは、5人の主人公がそれぞれの目的を持って戦い、色んな伏線が張り巡らされて、完結していないがストーリーの評価がとても高く、コンシューマーゲームとして出して欲しい、と名高いゲーム。 「うん、俺もやってる」 「本当?! じゃあこのゲームのキャラも描ける?」 「……多分」 「今日黒崎君の家行っていい?」 「何で?」  俺と笠井君は放課後に遊ぶような仲ではない。ただ席が前後なだけ。 「あのね、絵を描いて欲しいんだ。ダメかな?」  あざとい『ダメかな?』頂きました。小首を傾げて上目遣い。自分が相手から可愛く見える角度を分かっているとでもいうような完璧なアングル。口の前で合わせられた手は指先しか見えない。緩いセーターの萌え袖。ありがとうございます。俺じゃなく、イケメンにやって欲しかったが。 「あんまり上手くなくてもいいなら」 「やった! ありがとう。道具を家に取りに行ってから行くね。連絡先交換しよ。後で住所送っといて」  QRコードで連絡先を交換する。  お気に入りの画材でもあるのか? アナログで色を塗るの美術くらいだからあんまり自信ないんだけど。
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