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ゲームの話をしながらだと俺も饒舌になり、楽しく話しながら爪を塗れた。
「乾かすの後にして、絵の練習してもいい?」
「もちろん」
紙に爪くらいの大きさの四角を描き、その中にキャラクターを描いていく。ボールペンだとしても小さくて難しい。
「デフォルメされたキャラクターでもいい?」
「いいよ、ミニキャラ可愛いよね」
今度はデフォルメキャラを描いてみる。これならなんとかなりそうだ。笠井君の前に紙を差し出した。
「こんな感じになるけどどうかな?」
「すごく可愛い! 楽しみ!」
「紙と爪じゃ勝手が違うから、あまり期待はしないでね」
「えーー! めっちゃ期待してるよ」
小首を傾げて、えへっ、なんて言いながら笑顔を向けられる。くどいくらい言うが、その可愛い顔は俺ではなくイケメンに向けてくれ! 俺は壁になってひたすら見守るから。
ドライヤーで乾かして、ボールペンを握る。爪に触れる直前で止められた。
「待って、そっちから描くと反対になっちゃう」
笠井君が俺の左側にピッタリとくっつく位置で座る。俺の身体の前に手を付いた。
「近くて描きにくい」
「でも、近くないと描けないでしょ?」
まあそうか、と頷いた。笠井君の右腕の下から左腕を通して、笠井君の右手を押さえる。描きやすい小指側からキャラクターを描いていく。
やっぱり爪に描くのは難しい。線がヨレる。手ぶれ補正くれよ。それでも描いていくうちにコツを掴み、親指に描くキャラクターは1番満足いく出来になった。小指のキャラは薄目で見てもらうしかない。
「出来た、疲れた……」
ボールペンを離し、後ろに倒れ込む。
笠井君は右手を眼前に掲げてニンマリご満悦だ。
「ありがとう、すごく嬉しい」
「それなら良かった。左手は後日でもいい? ちょっと疲れた」
「うん! いつが空いてる?」
「俺はいつでもいいよ」
「明日は?」
「うん、また俺の部屋でいい?」
「また黒崎君の部屋に遊びにこれるの嬉しい」
キャハッ、なんて両手で口元を隠して顔を綻ばせる笠井君。あざと可愛いんだけど、俺が塗ったカラフルな爪とイラストに、胸がむずむずする。なんだ、このそわそわするような気持ち。
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