抵抗不可能

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 スパダリαと健気な可愛いΩが一目見た瞬間に恋に落ちる。運命の番の2人がひたすらイチャイチャラブラブしているのを見てキュンキュンが止まらない。何だこれ。動悸息切れ眩暈まで。神作品に出会って歓喜に震えた。  オメガバースは発情期になったΩがフェロモンにあてられたαに無理矢理されるというイメージがあり、食わず嫌いだった。でも、そうじゃない。純愛だ。  俺、黒崎謙也はハピエンしか許せない光の腐男子だ。ただただメインキャラが幸せにイチャイチャしているのを眺めていたい。  表紙買いした本は当たりだった。αのレイン様とΩのリラ君が服をはだけさせて密着して微笑み合っている、とっても幸せな表紙。  しばらく余韻に浸りながら眺めていると、リラ君が誰かに似ているような気がしてならない。こんなに可愛くて癒される笑顔の子、知り合いにいたら絶対に忘れないだろうに。  うん、気のせいだろう、と枕元に置いて瞼を閉じた。  気のせいのままでいたかった。気付きたくなんてなかった。リラ君に似ていると思ったのが、前の席の笠井空君だなんて。  工業高校だから男ばかりで、笠井君は乾ききった砂漠を潤すオアシスのような存在だ。  笠井君はめちゃめちゃ可愛い。目なんてカラコンしてるみたいに黒目が大きくてぱっちりの二重。長いまつ毛が大きな目を覆っている。小さくて赤い唇にスベスベしてそうな白い肌。誰が見ても『受け』だと思うような可愛らしい顔だ。  俺は笠井君の顔は好きだ。とくにイケメンと2人で話しているのなんかを見ると興奮してしまう。でもリラ君はダメだ。  笠井君は金髪にピンクメッシュのギャルだから。清楚系のリラ君とは真反対の、男たちを手玉に取るビッチな雰囲気の小悪魔だ。鈍感愛され総受けではなく、自分の魅力を分かっていて煽りまくるビッチ総受け。でも本命ができたら一途で、掌の上でころころ転がしていた男たちをバッサリ切る。本命に対しては処女返りして欲しい。そして俺は当て馬Aと当て馬Bを脳内でくっつける。全員幸せになって欲しいからな。  クラスメイトでこんな妄想をしてごめん。でもやめられないとまらない。あのお菓子のように。
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