【BL】omuzの短編集

「まて」ができないキミ

みなさんには、愛するひとはいますか？
愛しいひとはおりますでしょうか？

僕にはいます！ 人じゃないけど。

彼の名前は【チロル】と言います。
茶色に染った牛のような斑点柄が、あの有名なミルクチョコレートを思い出させました。僕がつけてあげた名前です。

もうかれこれ、10年以上の付き合いです。

僕がチロルを見つけた頃は、まだ僕はチロルよりも小さくて、じゃれあいたいだけの彼に押し倒されては泣いていました。

チロルはとてもお利口です。
「おすわり」も「よし」もできます。
「まて」だけ少し苦手だけど。

それなのに、チロルはあの晩、
黙って家から出ていきました。

僕は一晩、不安で不安でたまりませんでした。
次の日の朝もチロルの姿はありませんでした。
いつも、僕を起こしに来てくれるチロルはどこにもいません。

僕はベッドから降りました。
するとチャイムが鳴りました。
誰だろう。僕は扉を開けました。
そこには、チョコレート色の髪をしたお兄さんが立っていました。