「まて」ができないキミ

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知らない人でした。でも、僕はその人をずうっと前から知ってる気がしました。 「お兄さんだれですか?」 僕が訪ねると、お兄さんは少し微笑んで、 「俺はチロルだよ。康太(こうた)がつけてくたんじゃないか」 と言いました。 そんなまさか。チロルは人間ではありません。 この人には耳もしっぽも生えてません。 きっとこの人はチロルに扮した不審者だと思います。 けど、僕はチロルがいなくて寂しかったので、 チロルと名乗るその男を飼ってみることにしました。 チロルは僕よりも、随分大きな背をしていました。高校生くらいでしょうか。 僕はチロルに聞きました。 「どうして人間の姿をしてるの」 するとチロルは、 「ニンゲンになってみたかった」と言いました。 チロルはよく庭に遊びに来る野良猫に聞いたそうです。隣のそのまた隣の町を超えた山にある洞窟には、願いをひとつだけ叶えてくれる神様がいるのだと。 チロルはあの晩、家を抜け出して、 その洞窟にむかったそうでした。
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