3人が本棚に入れています
本棚に追加
知らない人でした。でも、僕はその人をずうっと前から知ってる気がしました。
「お兄さんだれですか?」
僕が訪ねると、お兄さんは少し微笑んで、
「俺はチロルだよ。康太がつけてくたんじゃないか」
と言いました。
そんなまさか。チロルは人間ではありません。
この人には耳もしっぽも生えてません。
きっとこの人はチロルに扮した不審者だと思います。
けど、僕はチロルがいなくて寂しかったので、
チロルと名乗るその男を飼ってみることにしました。
チロルは僕よりも、随分大きな背をしていました。高校生くらいでしょうか。
僕はチロルに聞きました。
「どうして人間の姿をしてるの」
するとチロルは、
「ニンゲンになってみたかった」と言いました。
チロルはよく庭に遊びに来る野良猫に聞いたそうです。隣のそのまた隣の町を超えた山にある洞窟には、願いをひとつだけ叶えてくれる神様がいるのだと。
チロルはあの晩、家を抜け出して、
その洞窟にむかったそうでした。
最初のコメントを投稿しよう!