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外はやっぱり好きではありませんでした。
本当に本当にうるさくてたまらないのです。
車の音も、人の話し声も、
時折聞こえるチャイムの音も、
煩わしくて、泣きたくなります。
僕はそんな時、頭が真っ白になって、
その場から動けなくなります。
けれど、いつもチロルの鳴き声がすると、
僕はこの世界にちゃんと戻って来ることが出来ます。
「康太! 落ち着いて! 大丈夫、大丈夫だから 」
今は鳴き声じゃないけれど、
こんな歩道の真ん中で、人目も気にせずに、
僕を抱きしめてくれるニンゲンのチロルのことが、
僕はどんどん好きになっていくのでした。
「お家に帰ろうか」
と僕が言いました。
チロルは心配そうに僕の顔を覗き込みました。
僕はチロルに微笑んで、頭を撫でてやりました。
すると、チロルはあっという間に、
僕を両腕で抱え、家の方へと歩きだしました。
これじゃあ、どっちが飼い主かわかりません。
僕は、あたたかいチロルの腕に抱かれながら、
こんな日々がずっと続けばいいのにな、
と思いました。
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