「まて」ができないキミ

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今更ですが、不思議なことに チロルはヒトの言葉を喋ります! 理解も出来ます! いつも、 「康太! 康太!」 と 僕を呼び、僕よりも大きな腕で 抱きしめてくれます。 でも、今日はなんだか様子がおかしいかもしれません。 「康太......」 と、どこか熱の篭った声で僕を呼ぶのです。 元々犬の時からチロルはスキンシップが好きでした。 ヒトの姿になってからは、 両手が自由に動かせるのが嬉しいようで、 より親密なスキンシップを僕にしかけてきます。 「チロル......くすぐったいよ」 チロルは背中に回した手で僕の背骨を、ひとつずつ丁寧になぞりました。 背筋がゾクッとはねてしまいそう。 僕は身を捩りました。 チロルがこちらに ぐんっ と体重をかけます。 僕は簡単に押し倒されてしまい、 チロルの下敷きになりました。 きっとチロルは(あの)の頃のように、 ただじゃれあいたいだけだと思います。 けれど、チロルの顔がこんなにも近くにあると、 僕は鼓動がおさまらなくなるのです。 「チロル やめてよ」 冗談ぽく、チロルを押し返します。 いつもなら、笑って済むじゃれあいが どうしてか今は、不安でたまりません。 チロルは、少し申し訳なさそうな顔をして、 僕の頬を舐めました。
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