第4話 高等女学校の運動少女な友人

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「何よ、笑うことはないじゃないの」 「いや、ごめんごめん。いや、よっぽど喋りたかったんだろうなあ、と思ってさ。しかしあんた、そんなに服部時計店の時計台、見たかったのかい?」  うん、と多希子は大きくうなづく。よくわからん、と皐月は頭をかく。 「わたしは結構あんたと長いつきあいだけど、そういう趣味があったとはねえ」  知らなかった知らなかった、と皐月は手を広げ、大きな声で言う。 「あら私、ずっと好きだったわよ。大きな綺麗な建物ってのは。特に最近のものは。ただ、だって、あなただってそうやって、驚いてるじゃない」 「そりゃあ、まあね。でもまあ、あんたは建築屋の娘だし」 「そう言ってくれると、ね」  まだいいのだが、と彼女は思う。  「それにしても、その女ボス、なかなかだな」 「奴よばわりはないでしょう?」 「ふうん?」  腕組みをして皐月は興味深そうに友人を眺めた。 「何よ」 「ずいぶんと気に入ったもんだねえ。ちょっと妬けるよ」  もう、と多希子は友人の腕をはたく。  校内ではその仲の良さに、(エス)だSだと半ば本気で彼女達は言われている。  実際はそういう仲ではなく、あくまでさっぱりとした友達同士だったのだが。 「だまされてる、ってことはないのかい?」 「まああなたは」  ふふん、と皐月は笑う。 「や、あんたは石橋を叩いて壊すくらいのくせに、気に入ったものにはひどく甘いから」 「かもしれないけれど」  違わない。  自分のことは良く知っているつもりだ。 「ま、あんたのことだから、止めはしないけれどさ。止めても聞かないし。ただ、深みに入りそうなら、とっとと逃げ出してきなよ」 「ご忠告ありがとう」  あ、時間、と彼女達は足早に教室へと入って行った。
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