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軽い口調だったが、友人の目は真剣だった。多希子はそれを見て、何やら逆に、苛立つものを感じる。
「そうよ私、それはすごくよく分かっているのよ! あのひともそうなのよね! みんな強いのよ! でも私そんな強くないわ! だから悔しいんじゃないの!」
叫ぶ様に言うと、思わずぽろり、と涙が出てきた。
感情が激していたから、涙腺が緩んでしまったらしい。はいはい、と皐月は多希子に近づくと、その肩を抱く。多希子はわっと友人の胸に泣き崩れた。
「なあ多希子、あんたは何だかんだ言っても、強いよ」
頭を撫でながら、皐月は言う。喉に引きつりを覚えながら、多希子はそれに答える。
「嘘ばっかり」
「大丈夫。好きなようにしてみなよ。ただし本当に好きなことをね」
背中を押すくらいのことは、自分にもできるんだ、と。
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