第2話 ヒナギク団の「ボス」、ハナ

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「さっきも思ったけれど、お嬢さん、あんたずいぶんと度胸があるねえ」  目の前で指を一本立てる。どき、と多希子はその仕草に心臓が飛び跳ねるのを感じた。 「たいていの『お嬢さん』はこんなことあれば、泣き帰るもんだけどなあ」 「いけません?」 「いけなくはないさ。ただ珍しい、って言ってるんだよ」  腰に手を当て、彼女はのぞき込むように多希子の顔をぐっ、と見据えると、付け足した。 「言っておくけど、誉めてるんだからね」 「誉め言葉には聞こえないわよ?」  多希子は思わず苦笑いをする。 「ま、いいわ。私もう、帰らなくちゃ」 「そ。じゃあまあ、これからまた銀座でこんな風に襲われたら、こう言いな。自分はヒナギク団のハナの知り合いだ、って」 「ハナ? ヒナギク団?」 「あたしの名。磯山(いそやま)ハナ、って言うんだよ」  なるほどそれで団に花の名をつけているのか。だがあの白くて可憐な花を想像したら、何となくおかしくなってしまった。 「お嬢さんじゃないわ。私は一ノ瀬(いちのせ)多希子」 「多希(たき)さんか。覚えておくよ」  そしてじゃあね、と手を振ると、ハナは銀座の雑踏の中に消えて行った。  時計台から、五時を告げる美しい音が聞こえて来た。
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