第1話 銀ブラ中にご用心

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第1話 銀ブラ中にご用心

 銀座をぶらぶらと歩くから銀ブラなんだという。 「一人かい?」  気が付くと、多希子(たきこ)は数人の少女に取り囲まれている。  銀座の交差点から少し歩き出した時だった。  も、もしかしてこれってとてもまずい状態?  多希子は思わず肩をすくめる。  年の頃は同じか、少し小さい位だ。  洗いざらしの着物を少し崩して、暑いのだろうか。  たもとをひらひらとさせて、腕まくりなんかもしてる。  ……まさかこれが前まえから街中には出るって言う、噂の不良少女団って奴?  多希子は思わず持っていたカバンをぎゅっと抱きしめた。  一応学校帰りなのだ。  父親の会社と、新しくできたばかりの服部時計店の時計台と、ついでに資生堂の竹川町店のショウウインドウをのぞいたりはしたが。 「へええ。府立の制服って、あたしゃ初めてみたよ」  制服を見れば、府立のあの学校だ、ってことが判る。  この東京でも、何校もある訳じゃない府立の高等女学校。  しかも彼女の学校は比較的新しい。 「いいのかなあ、お嬢さん」 「こんな時間にこんなとこに一人でふらふらしてていいのかねえ」  口々に少女達は言う。  確かに、こんな昼ひなかから、学生がふらふらしていていい訳ではない。  だが彼女には、それなりに理由があった。  そんな理由を言ったとこで仕方がない。  そもそも、ぶらぶらしていたのがいけない、と言われればそれまでなのだ。
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