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だいたい……
「貴美さーん、トイレットペーパーきれそうよー」
こういう声かけはだいたい、私が1人で遅めの朝食を食べている時だ。
この時を狙ってるのか?
昔はすぐに動いていたけれど、今は聞こえないフリをする。
そんなことより私は、今見ている韓流ドラマの続きが気になるから。
「貴美さーん?いないの?」
リビングのドアが開き、義母がやってきた。
「貴美さん、トイレットペーパーがね……」
人が食事をしていようがお構いなしで、一方的にトイレの話。
「あー、ごめんなさい、聞こえてなくて。お義母さん、取り替えといてくれますか」
「あら、あと少しあるから次の人でいいわよ」
「あー、じゃ、次の人でいいですね」
私は知っている。
義母の『あと少しある』は、ほんの少しの残りを、ピロッと挟んであるだけだということを。
意地でも、取り替えてやらない。
すぐそこに予備があるのはわかってるはず。
毎回私が取り替えるなんて、決まっていない。
ふと思う。
そういえば夫もトイレットペーパーの交換をしない。
以前、『ほんの少しになったら次の人のために取り替えといて』と言ってから、ほんのちょっとをペーパーホルダーに挟んで『まだ残っている』ふりをするようになった。
遺伝なのかなぁ?
トイレットペーパー交換ができない遺伝。
次の人にならないように、さっさと支度して、買い物にでも出かけようっと。
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