眠れない

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眠れない

ある朝、ものすごく疲れた顔で義母が起きてきた(演技の時も多々ある)。 「おはようござい……ん?体調でも悪いんですか?」 「はぁーーーっ」 私の質問には答えず、大きなため息をつく。 のそりと椅子に座り、だるそうに体を傾ける。 「ちょっ、熱でもあるとか?お義母さん?」 「あのね、今日、内村先生のとこへ連れてってくれる?」 内村先生とは、義母のかかりつけの内科の先生だ。 「いいけど、どうしました?」 「ここ最近、ずっと眠れないのよ。だから起きるのもつらいし、昼間も何もしたくないの。お薬が合わなくなってきたのかしら?」 義母は軽めの睡眠導入剤を処方してもらっているが、それでは眠れないということだろうけれど。 はぁーーーっと、今度は私がため息をつく。 「あのですね、昼寝をやめたらいいんじゃないですか?」 毎日、昼ごはんの後「ちょっと横になるわ」と部屋に篭り、下手すると夕方まで寝ている義母。 そりゃ、夜、眠れなくなるって。 たまーに畑仕事するくらい(20分程度)で、家事も運動もせず、食べて寝るだけの毎日だから、眠くもならないだろうし。 「あら、お昼寝は体のためにいいのよ」 それは働いている人や家事で疲れてる人じゃないのか? そもそも4時間も5時間も毎日寝ては逆効果だと思う、と何回も言っているのだけど。 「あれは昼寝じゃなくて本気の睡眠ですよね?毎日寝過ぎなんですよ、だから今日は昼寝なしで」 「えー、今だってもう眠いのよ。年寄りに我慢しろって言うの?お薬が合わなくなっただけよ」 なんだか体調が悪い気もするし、とぐだぐだ言っている。 昼夜逆転してるから、そりゃ体調もおかしいだろうし。 こんなことで内科に診察に行きたいだなんて、無駄だと思うんだけど。 そしてそんなお年寄りの相手をしなきゃならない内科の先生にも、同情します。 こんな義母でごめんなさい。 でもね、嫁の言うことは聞かないけれどお医者さんの言うことだけは「はい、わかりました」とよく聞くので、よろしくお願いします。 また通院か。 めんどくさっ!
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