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見栄はあるけどお金はない
お寺で、義父の三回忌の法要をやった。
田舎の付き合いで、近所のじーさんばーさんに、遠くから親戚もやってきた。
私はお茶を出して、準備をしていたんだけど。
「ねぇねぇ、ちょっと貴美さん。お宅のお母さんはお金に余裕があるのねぇ」
「え?そんなことないですよ」
「だって、ほら、あの簾みたいなやつ、幸代さんの寄付って書いてあるわよ」
指さされた方を見ると、紫と金色の縁取りのある簾が10本はあるだろうか?
夫と義母は真ん中の一番前に座っている。
その後ろで、ヒソヒソ話をしている近所のばーさんがいた。
「なんかね、百万したらしいよ。すごいね」
は?!
そんなの聞いてないぞ?
うちは夫の稼ぎがまぁまぁいいから経済的には困っていないけれど、義母はいつも「お金がないからあなたたちに迷惑をかけて心苦しいわ」と言って、生活費などは一切お金は出さないのに。
この三回忌だって、費用は私が夫のお金で払う予定。
なのに、百万の寄付だと?!
意味がわからん。
法要が終わる頃、住職がうやうやしく頭を下げて説明してくれた。
なんだか言われのあるいい簾だとか。
幸代はみんなの前で名前を呼ばれ、お礼を言われてご満悦の様子。
「だってねぇ、この後は私もお世話になるんですから、これくらいのことはしとかないと……」
死んでからあの世(?)での心配をするくらいなら、葬儀費用を準備しといてもらいたいのですが。
その前に介護の心配もあるんですけど。
ただの見栄っ張りじゃないかっ!
この話を夫にしたところで「母さんの金なんだからどう使おうといいだろう」と言うに決まってる。
私や子どもたちには、水道がもったいないとか電気料金が高いとか口うるさいくせに。
寄付をした幸代の息子として夫も讃えられていて、その顔はまんざらでもない。
この親にしてこの子あり、とはこのことか。
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