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風が体に打ち付けなくなるのを感じて、私は恐る恐る目を開けた。
すると、視界一面に素朴な木製の家の中が広がった。
「うわぁ…」
間抜けな声が漏れてしまうほどに、素朴で、温かみのある家だった。
「私、この家好き!気に入った!」
シエロさんはドヤ顔で
「そうだろう?」
と言った。
私は1つ疑問に思ったことを聞いてみた。
「シエロさんは、私のお父さんなの?」
シエロさんは顔を真っ赤にして言った。
「ちちちちちちち違う!断じて違う!」
「じゃあなんで私を育ててくれるの?」
シエロさんは神妙な顔をしたあと、イタズラをした男子のような顔をして言った。
「内緒だ」
「ええっ、もったいぶらないで教えてよ」
ぷくーっと頬を膨らませて怒った。
私は1つ提案をした。
「じゃあ、ノートを作ってよ」
「『ノォト』?」
なんだそれ?って顔でシエロさんは言った。
ここには、ノートがないのかな?
「ペンはある?」
「もちろん」
ペンはあるとしたら、紙もあるはず!
「じゃあ、紙はある?」
「あぁ、あるぞ」
そう言って、戸棚をガサゴソと漁り始めた。
少し時間が経ったあと、
「あったぞー」
と言う声と共に紙の束を上に持ち上げた。
やったぁ!
これで日記が作れる!
あ、私は前世の絃葉のとき日記を毎日書いていて、そのクセというかなんというか…
書かないとなんかソワソワするんだよね。
だから、書きたいの。
「これをどうするんだ?」
「これを1つにまとめて欲しいの」
「わかった」
シエロさんが手を動かすと、どこからか勝手に糸が出てきて、紙を束ねた。
「すごい!」
「ふふん。このぐらい朝飯前だ」
そう言った。
もしかしてシエロさん、子供っぽい?
思ってたイメージと違うな。
「それちょうだい!」
「ほらよっ」
「わっ」
いきなり投げられたら困るよ。
「これで日記が書ける……!」
私のご満悦な様子を見ていたシエロさんが、小声で
「かわいい」
って言ってるのを聞いちゃった。
カァっと顔が赤くなるのが自分でもわかるほど赤くなった。
いや私前世16歳で死にましたけど、恋愛経験0だからね。
かわいいなんて言われたことないし。
急に言うの、やめてよぉ。
「それでなにするんだ?」
私はとびっきりの笑顔で言った。
「内緒!」
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