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「ふん、分からないか」
謎の男が呟くと、辺り一面に風が吹き始めた。ザワザワと葉が囁き会う。
「まさか……!」
ビズがなにかに気づいた様子でクルスの袖を引き走り出した。
「師尊は、あいつと面識があるんですか?!」
一体何が起きているのか分からないまま、袖を引かれたまま走る。暗い森の中走るのは視界が悪く大変なはずなのに、この体は夜目がきくらしい。
同じく弟子のビズもしっかりとした足取りでかけて行く。
「師尊。もしかしてここは無渓山ではないでしょうか?もしそうなら、私は通行書を持っていないので、無断で侵入した事になります!これは罰せられても何も言えません!」
無渓山。確か、弟子のひとりの所有地だったはずだ。という事は先程出くわしたのは、アルギニルか!
何だ、それならあんなに驚くことなかったのに。
あれ?それにしては随分な態度だったような。
クルシュとアルギニルの間に大きな問題でもあっただろうか。
今の記憶の中にはこれと言った記憶は無いが。
しかし、逃げてしまった後で、来た道を戻るのも如何なものか。このまま月路に戻る方が良いのでは無いだろうか。
「大丈夫です。あの方は私の弟子、アルギ二ルです」
「?!アルギニルですか?……師尊は、その、大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫とは?」
「い、いえ!なんでもありません!師尊が大丈夫なら良いのです!変なことを申してしまい失礼致しました!」
とても気になるのだが。これ以上聞くのは野暮というものか。まぁ、そのうち分かるかもしれないし、その時が来れば考えよう。
「では、月路に戻りましょう」
「はい!」
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