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稔は通勤時に見かけるビジネスホテルに向かった。
帰宅難民でごった返してると思ったが、ロビーに客は居なかった。
カウンターに向かい部屋は空いてるかと聞いたら
「先程まで満室でしたが、家族の方が迎えに来られてたった今、一部屋空きが出ました。部屋を整えるまでお待ちいただければお部屋はご用意できます」
「一部屋ですか?」
「今空いたお部屋がスイートルームですので、お二人で宿泊するのに充分な広さはあります。本日このような状況ですので、宿泊費は通常ルームの料金にさせていただきます」
「宿泊費は済ませておくから、君は宿泊するといい。僕は男だからどうにでもなる」
「一人は嫌です。あなたが泊まらないなら私も帰ります」
びしょ濡れの服に体をガタガタさせて彼女が言った。
「一緒に行きましょう。寒いから早く」
稔は取り急ぎ手続きを済ませて部屋に行くことにした。彼女が眠ったころに部屋を出てロビーで休めばいい。
「わかった」
部屋に案内されまでスタッフが持ってきてくれたバスタオルで二人は無言で体を拭いた。
「お待たせしました。お部屋のご用意ができましたので右にあるエレベーターにお乗りください」
「ありがとう」
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