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やっと無くなった異物感に安堵したのも束の間、後孔に何かがあてがわれた。硬く、熱いソレが悠人自身であると理解した直後、
「——っぐ! あ゛あ゛あ゛!!」
熱が肉壁を割いて入ってくる。あまりの痛みに夏樹は叫んだ。痛みから逃れようと身体を捩るが、悠人がそれを許さない。逃げようとする腰を掴まれると引き寄せられた。
「抜いてくれ!」
夏樹の懇願が聞こえないのか、はたまた無視しているのか悠人は自分勝手な腰使いで夏樹を揺さぶる。
「いやだっ! 痛い……!!」
悠人が動くたびに、全身が引き裂かれるような痛みに襲われ、涙が頬を伝う。
「……泣いてるのも可愛い」
うっとりとした声音とは裏腹に悠人の行為は無情だった。何度も奥を穿たれて、痛みに意識が飛びそうになる。
「あ゛っ!」
逃げようと身体を捻ると獣のようにのしかかられバックで奥を突かれた。
「やだっ! 謝るから!!」
夏樹は髪を振り乱して叫んだ。なにが悠人の気に障ったのか分からないが、強姦されるようなことをしたのだろう。少しでも痛みから逃れるために思いつく限りの謝罪を叫ぶと悠人は軽く笑った。
「可愛いね。可愛い、俺の夏くん」
夏樹のうなじに鼻を埋める。匂いを堪能し、舌で舐めて、軽く歯をたてた。
少しずつ皮膚にめり込む歯に、うなじに当たる吐息に、夏樹の脳内は警鐘を鳴らす。アルファからオメガに転換するには、今現在分かっている条件を全てクリアしても失敗する可能性の方が高い。こんな夏樹の気持ちを無視して、無理矢理のセックスで成功なんてしない。
なのに、夏樹の本能は叫んでいた。
アルファでいたければ、うなじを噛ませるな。逃げろ、と。
「やめ……っ!」
皮膚が破ける音と共に部屋を血の薫りが満ちていく。うなじを中心に夏樹の全身を電流が駆け巡る。心音が大きくなり、体温が上がり、思考が薄れていった。
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