スマホよ、人に涙を見せろ

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「ふう暑い暑い。昔はもう涼しくなる時期だったのにね」 九月だと言うのにまだまだ照り付ける太陽。お買い物に行くだけで汗びっしょりだ。 ママのぼやきに微笑むお供の望夢(のぞむ)は小学五年生。彼だって暑いがそこは男の子、買い物袋を持たされる事に文句は言わない。 「望夢う、私はここまでだ。夕飯の準備は頼んだぞ〜」 「ママ頑張ってもう少し!眠っちゃダメだ!」 「いやそれは寒い時でしょ?」 ふざけながら玄関を開けると、待望のエアコンの風。そして二人を待っていた者達の声。 望夢は家に友達が二人いる。 友達というより家族であり、子分的な存在だが、もしかしたら向こうも彼の事を子分だと思っているかもしれない。ただ、間違いなく大の仲良しだ。 「わんっ」 「ジャンボ!ただいま!」 尻尾をぶんぶん振りながら飛びついて来たのは、名前の通り立ち上がると望夢より大きなゴールデンレトリバーだ。 大型犬の熱烈アタックを望夢はがっちりと受け止め、金色のふかふかを抱きしめる。 ジャンボはママには突然飛びついたりはしない。危険だと分かっているからだ。望夢が飛びついてもらえる様になったのも最近の事。大きくなったとジャンボに認めてもらえたのだ。 話しかけるとちゃんと聞いてくれるし、テレビを興味深そうに観ていたりする。言葉をある程度理解しているのかも。瞳に確かな知性を感じる。 その上なかなかのハンサムだ。六歳のおじさん犬にそんな事を言っても喜ばないかもしれないけど。 まあ、誰だって自分のペットが一番かわいいのだが、賢くてかっこいいジャンボが望夢は大好きだ。 そしてもう一人。 「ビッ!ビビビッ!」
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