スマホよ、人に涙を見せろ

「チーちゃんただいま！」

鳥籠の中で金網に捕まって「早く出せ！」とばかりに暴れながら鳴いているのは二歳のセキセイインコ。チビちゃんだからチーちゃん。
鮮やかな黄色ベースに黒い模様、お腹の方はエメラルドグリーンにお洒落した女の子。

人懐っこい雛を選んで、ママが愛情たっぷりに育てた甲斐あって、自分を人間だと思ってるんじゃないかと家族で話している。

残念ながらお話はしてくれないが、籠から出してあげると鳴き声は叫ぶ様な「ビビッ！」から可愛らしい「ピヨッ」に変わり、名前を呼ぶと返事をして肩にぴょんと飛んで来る。
誰かがお風呂やトイレの為に立ち上がると、何処に行くの？とばかりにビビッと追いかけて来るのが少し困った所ではあるが。

最初の頃は、絶対にジャンボがいる時にはチーちゃんを籠から出さなかった。
いくらジャンボが賢いと言っても当然だ。動画サイトにはペットの犬と鳥、或いは猫と鳥等、違う種類の動物が仲良く遊んでいる動画がたくさんあるが、それは特殊な例だ。何かあってからでは遅い。

だがチーちゃんは自分で籠を開けて外へ出る事を覚えてしまった。嘴で鳥籠の入口を持ち上げ、閉まる前に素早く体を突っ込んで脱出するのだ。

ある日、家族が外出から戻ると、お出迎えに来たジャンボの頭の上になんとチーちゃんが停まっていた。
そして驚くみんなを見上げて得意げに「ピヨッ」と鳴いたのだ。

「あんた、ピヨッじゃないでしょ？」

もう呆れるやらかわいいやらで、それから様子を見ながら二人は一緒に家族の輪に入れる様になった。

「さあ、暑いけど洗濯物入れなきゃ」

僕も手伝うよと望夢が立ち上がり、ママがベランダを開けると、突然ジャンボが大きな声で騒ぎ出す。

「わんっ！わわんっ！」