スマホよ、人に涙を見せろ

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ネズミのマークの超人気動画サイト、チューチューブ。 世界中の人々が投稿する様々なジャンルの動画で成り立っており、人気投稿者は「チューチューバー」と呼ばれる。その活躍は目覚ましく、子供が将来なりたい職業の上位にランクした事も。 但し日本では十八歳未満の者がチャンネルを開設するには親の同意が必要だ。 大夢は両親にジャンボとチーちゃんの動画をアップしたいと頼み、既に断られている。 「パパは反対だな大夢。そんな事をしてママのファンが増えたらどうするんだ?」 「パパの言う通りよ、そんなの困るわ」 いや否定せんのかいとパパが突っ込み、望夢が笑って、大夢はお約束通り「いやその心配は」と余計な事を言ってママにはたかれる。 「まあ、チューチューバー自体に反対はしないが、お前たちにはまだ早い。 年齢の問題じゃない、パパとママが良いと言うまで待ちなさい。もし約束を破ったら一週間晩御飯抜きな。 連帯責任でジャンボとチーちゃんも」 「お、おんっ!?」 「ビビビビっ!?」 「もちろんパパもね」 「な、なんで!?」 年齢の問題じゃないと言うからには、大夢が十八歳になっても許可が下りない可能性もある。 「家族みんなでチューチューバーしてる人なんてたくさんいるじゃん?顔出ししなくてもいいんだし。 それにパパやママだって暇になれば動画観てるくせに、おかしいよな望夢。 俺はネットに乗せてみんなに届けたいんだ、ジャンボとチーちゃんのこの可愛らしさを」 諦めない大夢。 それは決して悪い事ではないはずなのに。 なぜか望夢はスマホを構える兄の瞳を見ると、胸の中がもやもやするのだ。 二人の可愛らしさを届けたい。 大夢は本当にそう思っているのかな、と。
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