スマホよ、人に涙を見せろ

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朝が来て、ママの声で目が覚めた。 庭のお花に水をあげる為に玄関を開けた、その一瞬に野良猫は侵入を試みて、ママが必死でブロックしたのだ。まさに油断も隙もない。 玄関の床にはっきりと、小さな強者(つわもの)の足跡が残っている。 危険だからチーちゃんに籠を出るなと言っても聞いてくれるはずがない。 望夢は、手のひらにチーちゃんを乗せて撫でている時に猫がベランダから覗いていて、それに気づいたチーちゃんの鼓動がマシンガンの様に激しくなってびっくりした事がある。 ジャンボだって一日中見張っている訳にはいかない。 「ビビッ!ビビビッ!」 出せと言われても仕方ない、籠の入口をビニールの紐で縛って勝手に開けられない様にしたが、チーちゃんはそれを嘴で食いちぎってしまう。 かわいそうだが金属製の鍵を付け、籠から出してあげる時には窓や玄関の戸締まりをきちんと確認する事に家族で決めた。 野良猫の方は、人間なんてどうにかなると舐めてかかっているのだろう。 実際、足音を消して接近し矢の様に飛びかかる猫の強襲は、人間の反射神経では防げない。 敵はその道のプロ、小さな(ヒョウ)であり虎である。一撃ガブッとやられたらそれで終わりなのだから。 もちろんチーちゃんの風切羽は切ってある。 ペットとして飼う為に最大の武器を人間に奪われている訳だが、例え飛べるとしても家の中では、執拗に狙われれば逃げられるかどうか。 望夢は自分が家にいる時にはチーちゃんを守る為に絶対に隙を見せないと誓った。 ステータス素早さ全振りの手強い相手だが、いざとなったらやっつけてやると決めたのだ。 しかし。
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