スマホよ、人に涙を見せろ

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学校帰り、望夢は同級生の女の子が三人、道端にしゃがみ込んで騒いでいる所に通りがかった。 「望夢君見て見て、かわいいんだよほら」 文字通り猫可愛がりされてスマホを向けられているのは二匹の子猫。そしてニャ〜と甘えた声を出している親猫。 三匹共白地に黒の模様が入っていてそっくりだ。 あっ、と心で叫んだ望夢と目が合った途端、親猫はバツが悪そうに子猫を連れて逃げて行った。 そうだ、あの野良猫だ。 「えー逃げちゃった。ざーんねん」 「望夢君から(ジャンボ)の匂いがしたのかなあ」 そうかもね、と答えた望夢だが。 その胸の中で先程の決意は書き直される。 だが改悪ではない。 小さな頃からジャンボと育った彼は動物は何だって好きだし、猫だって大好きだ。酷い事はしたくない。 だがチーちゃんの敵ならば、それとこれとは話が別、なのだが。 望夢の知らない所では、あいつもただの罪もない猫。しかも子供がいる。 チーちゃんを狙っているのも間接的には子供の為と言える。 意外と人馴れしている様だし、もしかしたら近所には、あまり良くない事だが餌をあげてかわいがっている人もいるかもしれない。 突然いなくなったら心配する人もいるのかも。 そうだ。あいつからチーちゃんを守ってあげる、という事は。 あいつを守る事でもあるのかもしれない。 本当にそうなのか、ちゃんとした答えは分からない。 でも間違っていない自信があった。 野良猫を憎むんじゃなくて、みんなの為にみんなを守る。 そう思えば何だかかっこいいじゃないか。 ☆ 「わんっ!」 日曜日。望夢と大夢が立ち上がっただけでジャンボは既にはしゃいでいる。 お散歩だよねと歌っている。 そしてリードを繋いだ後、ちょっと待ってと言って大夢はチーちゃんの鳥籠に手を伸ばした。 「おんっ?」 ジャンボが不安そうに大夢を見つめている。
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