スマホよ、人に涙を見せろ

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「えっ、兄ちゃん何を……!」 大夢はチーちゃんを病院等に連れて行く時に使うお出かけ用のミニ鳥籠に移し替えた。 「ピヨッ」 「まさか、連れて行こうって言うんじゃ」 「たまにはいいじゃん?今ならパパもママもいないし」 「でも、野良猫が……」 ジャンボの散歩にチーちゃんを連れて行った事は何度かある。外で肩に停まらせた事も。 もちろんあの野良猫が現れる前の話だ。 両親がいない時に連れ出して、ほんの、ほんのちょっとだけ。 何かあったら大変だけど、チーちゃんは嬉しそうに遊んでいて、二人でドキドキワクワクしながら写真を撮った。 「大丈夫だって!野良猫はジャンボがいれば逃げて行くだろ。俺とお前も付いてるんだし。 チーちゃんだってたまには外に出たいはずだよ。天気もいいし」 「でも兄ちゃん、チーちゃんは絶対に籠から出さないで。何かあったら……」 「何かあったら責任は俺が取るって」 「何かあってからじゃ遅いんだよ兄ちゃん!」 珍しく反抗的な弟に、大夢も少し気が引ける。 悪い事、見つかったら怒られる事をしようとしている自覚が、胸の中から待てと言っている。 「分かったよ、絶対に籠からは出さないから」 それでも、みんながいるから大丈夫だという気持ちは揺るがなかった。
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