逃亡者アロウ

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逃亡者アロウ

   午後3時発…つい先ほどアロウは、その海王星〜冥王星行きの小型フェリーに、一台の宇宙バイクで乗り入れたところだ。   そして、人の姿も疎らな船内、ちょうど出発と同時に奥の個室へと入る。    そう、人類が広く太陽系に進出し、さらにその外にまで足を伸ばそうというにも、いまだ発展途上。それゆえ、この青年アロウのように冥王星へ向かう者は少ない。  ただ、そのアロウも、別段そこに目的がある訳ではなかった。事情あって、そうした人目につかぬ辺境の準惑星(・・・・・・)に身を寄せたいだけだった。  さて、ネットカフェ等の一室よろしく、こぢんまりとした空間内。しばし着たきりな簡易宇宙服の胸元を緩めると共にアロウは、ブーツを脱ぎ捨て、窓際のパイプベッドに身を投げた。  同じくして、リクライニング用のリモコンでベッドの角度を上げ、窓の外に流れる退屈な闇を、ぼんやりと眺め出す。  そうかと思えば、その端正な横顔や均整の取れた身を強化ガラスに映しつつ、いつしかアロウは眠り込んでしまった。  遠く火星での利権を巡り、自国リィツを含む地球の二国が争う最中、その自国軍の機密を手に逃亡を図ってから、約10日後の事である。
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