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 地球はヨーロッパの一国であるリィツ大公国は、その建国から永きに亘り、同大公が三権その他権力を有する絶対君主制国家であった。  また、かつて二十世紀となってからは、その是非をいつでも国民に問える立憲君主制国家ともなったリィツだったが、歴代大公の良政ゆえに、以降それ(・・)が実践された例は一度もなかった。  ところが、すでに宇宙時代に入って久しい、いまを遡ること二年余前。火星での利権を巡り、同じくヨーロッパの国家ルーレとの摩擦が強まる中、突然の軍部のクーデターによって時の大公が、その地位を追われると共に初めて君主制が崩壊。代わりに軍事政権が誕生し、現在に至る。  万が一の事態を懸念するがゆえ、摩擦の傍ら、ルーレに譲歩する事しばしば…という大公アラド二世の態度に対し、強硬派の同軍部が業を煮やした結果であった。  そして、その軍事政権の誕生からまもなく、ついにリィツはルーレと戦闘状態に。あくまで『火星内』という言わば局地的なものであるとはいえ、それはいまだに続いている。  一方、そもそも職業軍人にして、リィツ宇宙軍中央情報局少佐の地位にあったアロウは、その戦いが始まってからも、それまでと変わらず火星での任務にあたっていた。  しかし、ある日ある時、状況は一変。その宇宙軍から逃亡を図るに伴いアロウは、同軍警察から追われる身となった。   それは、リィツ宇宙軍中央情報局の元締めであり、またアロウの上官でもあるフォグ大佐の、この一言に端を発する。 『知らなくていい…』
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