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「じゃあ、今日はお預けにしよっか」
「だよな」
悠李は残念そうに、ベッドにゴロンと寝転がった。
自由になった両手で悠李を抱きしめると、すぐに抱きしめ返されお互いの肌を密着させる。
わたしの頭に頬を寄せていた悠李は小さな溜め息をこぼした。
「これ、我慢できるかな」
「離れよっか?」
「やだ、むり。ここにいて」
「なんか可愛いなぁ」
「可愛いのは彩月だよ」
悠李はむくりと起き上がり、わたしの頬に繰り返しキスをあてた。
二人で見つめ合って微笑み合う。
大きな腕にぎゅっと包み込むように抱きしめられて、わたしは幸せな気持ちでいっぱいになった。
「そうだ。ねえ、さっきまでみてた夢の話をしてもいい?」
「いいよ、どんな夢みてたの?」
わたしのおでこに、悠李が愛おしそうに唇を寄せる。
「わたし達が付き合う前からの夢だよ。クリスマスパーティーの日のこととか、わたし達が付き合った日のこととか。初めてキスした日のことも。わたしがその時にどう思ったのか話したいなと思って」
「それは気になる。聞かせて」
悠李が食い気味に返事をする。
期待されていることがひしひしと伝わってきたものの、それに答えられるのか不安になったわたしは、躊躇しながら首を傾げた。
「待って、やっぱり恥ずかしいかも。そんな大した話じゃないし」
「いいじゃん、聞きたい」
甘えん坊な男の子のように穏やかに笑う悠李に呆気なく負けたわたしは、肩まで毛布を被って口元を覆った。
「笑わない?」
「笑わない。おれが嬉しいだけ」
「ふふ、何それ。じゃあ、ほんとに笑わないで聞いてね。最初はサラサラの黒髪が―――」
悠李に優しく頭を撫でられて、二人で過ごす穏やかな時間はこれからもずっと続いていくだろうとわたしは予感した。
窓から漏れる2月の満月の光に淡く照らされながら、幸せな未来を思い描く。
どんな綻びができても、こうして何度もじっくり話して触れ合って。
二人でほどいていけばいい。
ゆっくりと、ゆっくりと、時間をかけて。
ふたりで解く【了】
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