ある日の午後、玄関先にて

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   状況が飲み込めないまま目に映ったのは、玄関の天井から降り注ぐオレンジのダウンライトの光。  その眩しい光を背に浴びた悠李に、力強く抱きしめられる。  どんな表情なのかは分からなかった。 「おれこそごめん。今日なんか変かも」 「気にしないで。当たり前だよ、体調悪いのに」 「それ、違うから」 「何が違うの?」  悠李の腕に力が入る。  どきどきと高鳴る鼓動が抑えられない。  恥ずかしい気持ちでいっぱいになりながら、控えめに腕を伸ばして抱きしめ返した。 「嫌なら引っ叩いて」  少し身体が離れたかと思えば、耳元に悠李の唇が触れる。  耳の縁をそっとなぞるようなキスに、わたしの鼓動がまた跳ね上がった。 「ん……」  悠李の名前を呼びたいのに、出てきたのは自分でも聞いたことがない声だった。  恥ずかしくて、でも悠李はキスをやめてくれなくて自然と目に涙が浮かぶ。  嫌じゃないけど、どうしたらいいのか分からない。  キスから逃れるように悠李の方に顔を向けると、薄茶色の瞳がわたしを捉えた。  二人を結ぶ、透明な視線。  けれど肌が焼け付くような一方的な熱が注がれ、ますますわたしは混乱した。 「彩月にそんな目で見られて、普通でいられるほど大人じゃねぇよ。おれは」 「ゆう……」  悠李の名前を呼ぶ唇を手のひらで覆われる。  その上から、悠李は優しいキスを落とした。  「次はこの手、退けていい?」  すぐそばで悠李の長い睫毛が揺れる。  かっと頬が熱くなり、嬉しさと恥ずかしさで頭の中はぐちゃぐちゃだった。  精一杯、何度も頷いて見せる。  悠李はわたしの頬に両手を添えて、切なげに微笑んだ。
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